
今回Shibuya Startup Support(以下、SSS)は、スタートアップビザを保有し、日本で事業を展開する4人の創業者にインタビューを行いました。登場いただいたのは、KanjuTechのAlex Kunin氏、AI SquareのLouis Boka氏、SportsEyeのAlex Fournier氏、PalanceのAbbas Alighanbari氏です。それぞれ製品開発、市場テスト、日本でのビジネス展開について語っていただきました。
SportsEye
国内外のスポーツチームの多くは、動画や SNS 用コンテンツの制作に時間とコストがかかり、大手クラブのような量とクオリティを実現するのが難しい状況にあります。。SportsEyeでは、最先端のAIを使って、あらゆるスポーツチームが数分で短尺・長尺の動画やSNS投稿を作成できるよう支援します。これまで数日かかっていた作業を大幅に効率化し、どのチームでも質の高いコンテンツ発信が可能になります

Palanceは、個人投資家、ファイナンシャルアドバイザー、資産運用プラットフォーム向けに設計されたマルチアセット・ポートフォリオ分析プラットフォームです。AIを活用して、より深いインサイトを提供します。投資家は「情報が断片的で複雑」「自分に合った分析が見えにくい」といった課題を抱え、パーソナライズされたフィードバックの不足に悩まされています。Palanceは、これらの課題を統一された使いやすいインターフェースで解決し、従来資産からオルタナティブ資産まで、あらゆるクラスに対応した知的で実用的な分析を提供します。
また、暗号資産投資家向けに特化したプロダクト「CoinIQ」も開発しました。暗号資産ポートフォリオは、ボラティリティや情報の不透明さ、そして体系的なレポーティングの不足という特有の困難に直面しています。CoinIQは、この問題を解決するために専用設計された分析ツールです。投資家の行動パターンや潜在的な詐欺リスク、そして価格だけではない有用な指標を識別し、可視化させることができます。
すべての投資家に「明確な視点(Clarity)」、「自信(Confidence)」、そして「主導権(Control)」を提供するという点で、PalanceとCoinIQの根底に流れるDNAは共通しています。

従来のAIモデルは一般的に、あらかじめ学習された固定的なソリューションとして提供されており、現実世界との効率的なインタラクションにおいて、リアルタイムな適応が求められる場面では問題や不具合が生じることがあります。KanjuTechは、自動車、モバイルロボット、ドローン、産業用ピッカー、IoTデバイスなどが、変化し続ける環境の中で認識し、行動できるよう支援しています。これにより、それらは移動しながら新しいスキルや対象物を学習し、データセットの分布変化にも強く適応できるようになります。

日本には空港、工場、港湾、データセンターなど多くの大規模施設がありますが、設置済みのカメラや機械の多くは古く、最新のAI技術と互換性がありません。私たちのAIは、既存設備をそのまま活かしながら新たな価値を引き出します。高額な新ハードウェアを購入する必要はありません。たとえば空港では、既存のカメラ映像を3Dマップ化し、滑走路上の障害物を検知するシステムを構築できます。また、新しい建物を計画する企業に対しては、建築ルールを遵守した設計案をAIが迅速に作成し、施工準備を支援します。

ユーザーへのインタビューをいくつか実施し、現在は日本のサッカーチームに提供するプロトタイプを完成させつつあります。ヨーロッパ市場と異なる点も多く、今の段階ではまだ多くの検証が必要です。その点で、SSSの支援は非常に役立っています。たとえば、今週水曜日にはShibuya Bridgeで営業ピッチのロールプレイイベントがあり、日本流の営業スタイルを学ぶ機会になるでしょう。
スポーツ分野では市場テストに時間がかかるため、そこが大きなチャレンジでもあります。
B2B2C面では、日本の独立系ファイナンシャルアドバイザーや中小の資産運用会社と直接対話しました。これにより、彼らのレポーティング基準やコンプライアンス要件を理解し、Palanceがどのように業務効率化を支援できるかを明確にしました。私たちのツールは、時間とコストの削減、そして競争優位の確立に貢献できます。
B2C面では、日本のリテールユーザーを対象に限定的なプロダクトテストを実施し、UIやポートフォリオ分析の分かりやすさに関するフィードバックを収集しました。その結果、オンボーディングフローや分析エンジンを改善し、より直感的でローカライズされたユーザー体験を実現しています。
KanjuTechは、日本市場向けのテストを、顧客との直接的なプロジェクト、体系的なフィードバック、そして国内投資家の支援を組み合わせる形で実施しました。チームは、ロボティクスおよび産業オペレーターを対象に30件以上のユーザーインタビューを行い、彼らのニーズを確認しました。その結果、モバイルロボットのナビゲーション、ドローン点検、海上ローディングアーム制御といった分野で、3社の日本企業とのパイロットプロジェクトを獲得しました。さらに、同社は国内の主要テックカンファレンス2件で技術を発表し、2つのピッチコンテストに参加しました(うち1件で優勝)。日本の投資家2社からシード資金の調達にも成功しています。
AI Squareは、設立当初からグローバル市場を視野に入れており、日本もその対象のひとつでした。日本企業の多くは、大手の国内企業と取引する傾向があるため、小規模な日本拠点のスタートアップとして競うのではなく、海外拠点を持つ日本企業と協業する形を選びました。この戦略により、非常に大規模な日本企業との間でも概念実証(Proof of Concept)プロジェクトを実施することが可能になっています。
たとえば、日産やトヨタなどとの共同検証で成果を上げたことで、日本市場に適したプロダクトであるという自信を得ました。すでに日本語版の製品も完成しており、今後は三菱電機のような大手システムインテグレーターとの提携を目指しています。さらに、流通拡大と信頼性向上のために、日本のコーポレートVCからの出資も検討中です。
多くの物事が進むプロセスは、あなたの母国とは全く違うことがあります!私はスタートアップや営業において、効率的で柔軟なアプローチを取るタイプですが、日本ではすべてがきちんと構造化されている必要があります。何をするにも時間がかかります。これは確かにチャレンジですが、正しいマインドセットを持てばむしろ楽しく感じることもできます。また、「建前」や「根回し」など、日本ならではのビジネス文化にも慣れる必要があります。
多くの創業者が、日本での起業を理想化しがちですが、実際の日本市場は簡単ではありません。言語の壁、複雑な手続き、そして保守的な資金調達環境など、さまざまな障壁があります。ですが大切なのは、日本に拠点を置くことが戦略的な強みになるよう設計することです。日本特有、もしくは日本で顕著な課題を解決できるなら、それが競争優位につながります。ただし、小さな成果を得るにも膨大な事務作業やコンプライアンス対応が必要になります。
それでも、ローカルな知見と忍耐を持てば、日本は非常にやりがいがあり、他にはない市場になると思います。
日本では、「正しいつながり」がすべてです。まずは信頼できる支援ネットワークを見つけることが大切です。それは、政府系の支援機関(SSSなど)や大学関係者、良識ある投資家、あるいは顧客やパートナーを紹介してくれる個人など、さまざまです。
日本は世界で2番目に大きなエンタープライズ市場であり、企業は長期的に信頼できる技術への投資を重視する傾向があります。これは、既存の古いシステムを使い続ける産業に新しいイノベーションをもたらす絶好のチャンスだと言えます。ただし、これには長期的な視点が不可欠です。私たちのアドバイスは、グローバルな視点を持って取り組むことです。海外市場での実績は、日本で信頼を築くための資金力と信用につながります。もし海外でシードラウンドを調達できれば、言語・文化・ビジネス慣習を理解した強力なローカルチームを採用することができ、外国人起業家が直面しがちな多くの障壁を取り除くことができます。
Alex Kuninさん(KanjuTech)、Louis Bokaさん(AI Square)、Alex Fournierさん(SportsEye)、Abbas Alighanbariさん(Palance)、日本での起業に関する経験や洞察を共有してくださりありがとうございました!
日本のスタートアップエコシステムやスタートアップビザに興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。最新のイベント情報は、公式SNSで随時発信しています。
Shibuya Startup Support:https://shibuya-startup-support.jp/
Shibuya Startup Supportソーシャルメディアアカウント
LinkedIn:https://www.linkedin.com/company/shibuya-startup-support/
Facebook:https://www.facebook.com/shibuya.startup.support
X(旧Twitter):http://twitter.com/ShibuyaStartup