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スタートアップビザホルダーインタビュー:STAYGE Labs、Michael Baeg氏
16.10.2024
Interview

スタートアップビザホルダーインタビュー:STAYGE Labs、Michael Baeg氏

今回、アーティストとファンをつなぐプラットフォームを開発するSTAYGE Labs, Inc.のCEOであり、スタートアップビザホルダーのMichael Baegさんにインタビューを行いました。これまでの道のり、渋谷のスタートアップビザプログラムに興味を持ったきっかけ、そして今後のビジョンについてお話を伺いました。

(写真:STAYGE Labs)

自己紹介とビジネスについて教えてください。

こんにちは、Michael Baegです。STAYGE LabsのCEOを務めています。STAYGE Labsでは、アーティストとファンをつなぐプラットフォームの開発と運営をしています。テクノロジーを活用し、K-POP業界の中心にある活気あるファン文化を育み、アーティストと世界中のファンとの距離を縮めることをミッションとして設立しました。

私たちの主なサービスには、ライブコミュニケーションファンダムプラットフォーム「LiNC」とデジタルフォトカードサービス「tin」があります。どちらもK-POPファンの特有のニーズに応えるサービスになっており、「LiNC」はファンとアーティストがプライベートメッセージや、双方向のインタラクティブライブストリーミング、1対1のビデオ通話などを通じて、より繋がるためのプラットフォームになっています。どちらも大きな注目を集めており「LiNC」は約1年間のベータ版期間の成功を受け、2024年9月に正式リリースされました。また、「tin」は世界中で70万回以上のダウンロードを達成しました。

さらに私たちのビジネスはB2Cにとどまらず、B2Bのパートナーシップも展開しています。特に韓国の大手エンターテインメント企業、CJ ENMとのパートナーシップで、Mnet PlusのGlobal K-Pop Fandom Platformの運営を行なっています。これにより、世界中の数百万ユーザーを対象とした大規模なプラットフォームを管理し、エンターテイメント重視のサービスを提供しています。

これまではK-POP業界に注力してきましたが、今後は特にJ-POPアーティストにも事業を拡大するため、日本市場への進出を決めました。

ビジネスを始めたきっかけと、これまでの道のりについて教えてください。

大学時代、私はコンピュータサイエンスを専攻しており、その頃高校生だった私の弟は、音楽の道を志しました。私は彼の音楽とエンターテインメントの才能を信じ、自分のスキルと知識を活かしてどのように彼の音楽活動をサポートできるかを考え始めたのは、インターネットが普及し始めた頃でした。私は弟の音楽活動を促進するためのウェブサイトを構築し、ソーシャルメディアが広がるにつれ、このプラットフォームを活用して彼のアーティストとしての存在感を高める方法を探り、弟と一緒に運営していました。

他にも私たちのサイドプロジェクトの一つとして、過去には他の約7人のミュージシャンと協力し、様々なプラットフォームやクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使って、世界中のファンと共に派生コンテンツをつくったり、新しい音楽配信方法やプロモーションの方法を試したりしました。

私のキャリアは常にITとエンターテインメントの境界線上にあり、これはおそらく弟とお互いに影響し合っているからだと思います。私はゲーム業界でソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートし、アートとテクノロジーが交わるところで働いていました。その後、放送業界に移り、コンテンツを活用したIT主導の新規事業を企画したり、予期していなかったベンチャーキャピタルのキャリアでも、エンタメテック分野のスタートアップを発掘し支援したりしていました。

これまで、弟や他のミュージシャンとの交流を通じて、エンターテインメント業界の構造やさまざまな利害関係者の視点、そしてITやVCでの経験から、資本の流れを深く理解するようになりました。これらの知識を活かし、弟のように才能がありながらも、機会が不足しているために夢を実現できないアーティストたちを支援したいと強く感じるようになりました。これが私の使命であり、残りのキャリアを捧げるべきものだと考えるようになりました。

これが、私と弟がSTAYGE Labsを共同創業するきっかけであり、ファンコミュニティプラットフォームを中心に、アーティストとファンのための持続可能なプラットフォームエコシステムを構築することを目指しました。しかし、振り返ってみると、私たちのビジネスは少し早すぎたかもしれません。2016年に会社を設立した当時、「ファンダムプラットフォーム」という概念はK-POP業界には存在していませんでした。

エンターテインメント業界とIT業界を独自の方法で結びつけることでビジネスチャンスを見つけようとしましたが、ビジネスモデル、アプローチ、マインドセットが完全に異なるこの二つの業界を融合させるのは、予想以上に困難でした。

COVID-19パンデミック中、私たちは苦境に立たされ、危機でもあり、チャンスでもありました。1年の準備期間を経て海外ファンを対象としたグローバルコマースサービスを立ち上げましたが、パンデミックにより物流は途絶え、オフライン依存のビジネスはしばらくの間は難しいなと感じました。

そんな中、今の事業とは全く別で、オフラインイベントの開催ができなくなったアーティストや会場を支援するために、オンラインコンサートプラットフォームを立ち上げました。この取り組みによって韓国の大手メディア企業との提携につながり、最終的には彼らからの投資を受けることになりました。

それ以来、私たちの組織は大きく成長し、今日に至っています。最近では、韓国のメディア企業とのオープンイノベーションプロジェクトに加え、自社のプラットフォームビジネスも再開しています。これには、日本市場への進出を目指す「LiNC」や「tin」も含まれています。

なぜ日本を選んだのですか?

日本市場は私たちにとって非常に重要です。日本の子会社を設立する前から、私たちはグローバルに事業を展開していましたが、B2C収益の約90%は日本から来ています。しかし、このデータが日本市場の潜在力を示しているとはいえ、日本でのビジネスが簡単であることを意味するわけではありません。私たちが事業を展開している170以上の国の中で、日本は最もサービスのローカライズが求められる市場で、言い換えれば、日本は高いポテンシャルと高い難易度を持つ市場だと考えています。

この市場を効果的に攻略するために、私たちは初の現地子会社の設立場所として日本を選びました。日本での成功のカギは、マーケットの理解とローカライズだと思っています。現在、現地の人材を採用する準備を進めています。日本市場により特化した製品やサービスを提供できるようにするためには、日本のビジネスとして日本に根ざしたブランディングが必要だと考えています。

(写真:STAYGE Labs)

SSSビザに応募した理由は何ですか?

韓国のスタートアップ支援機関であるD.CAMPを通じて、SSSビザについて知りました。2023年のはじめに日本市場への進出を本格的に準備し始めた際、D.CAMPが韓国のスタートアップに対して日本市場のビジネスチャンスを紹介していました。そこで彼らに日本市場への進出支援について問い合わせたところ、SSSを含むいくつかの企業や組織を紹介してもらいました。

数回のオンラインミーティングの後、2023年4月に日本を訪れ、SSSのオフィスを訪問してチームと直接会う機会がありました。渋谷が日本のエンターテインメント業界の中心であることを考えると、SSSのチームは私たちのビジネスに深い理解と関心を示してくれました。また、SSSのサポートを受けることで、渋谷に拠点を構えることが日本市場進出のための理想的な戦略であると感じ、自然とSSSを通じてビザ手続きを進めることに決めました。

SSSコミュニティの一員としてどのようなメリットを感じていますか?

約2ヶ月前に日本子会社の設立を完了し、最近では企業銀行口座の開設も終えました。今後さらに多くのサポートを期待していますが、これまでのところ、SSSは設立手続きや銀行口座の開設において非常に貴重な支援を提供してくれています。

一例を挙げると、他国から来た多くの起業家と同様に、日本市場に進出する韓国のスタートアップ創業者が見落としがちな点の一つは、主要銀行の選定です。韓国では法人の銀行口座を開設するのは比較的簡単ですが、日本では事情が大きく異なります。日本の企業とパートナーシップを結ぶ際には、相手が主に取引している銀行をチェックし、潜在的なパートナーの信用度を評価するのが一般的です。このため、多くの日本企業は自社のウェブサイトに主要銀行を掲載しています。しかし、このことを知らない多くの韓国の起業家は、日本法人設立時に最も簡単に口座を開設できる銀行を選んでしまうことが多いのです。

SSSのおかげで、日本のビジネス環境の微妙な違いを早い段階で理解しました。また、SSSのサポートを受けて、日本の三大メガバンクの一つであるみずほ銀行で口座開設することができました。SSSは口座開設の全過程でサポートし、銀行まで同行してくれました。外国人である私が自力でこのプロセスをスムーズに進めるのはほぼ不可能だったでしょう。韓国や日本のビジネスに精通している知人たちでさえ、これほどの信頼性のある銀行で口座を開設できたことを羨ましがっていました。

今後の展望について教えてください。

日本市場への展開の第一歩として、「LiNC」のサービスをローカライズし、K-POPアーティストと日本のファンをより密に繋げることを計画しています。また、多くのK-POPアーティストも私たちと同様に日本市場を非常に重要視しており、共同マーケティングやコラボレーションを通じて、日本市場におけるより効果的なプロモーション活動を進めていく予定です。

次のステップとして、日本のアーティストと世界中のファンを繋げることを目指しています。最初、日本のアーティストにも私たちのプラットフォームを通じて、ファンと交流したり、イベントを開催したりして彼らの売上を上げるサポートができればと思って、友人や知り合いのエンタメ関係者に相談してみました。

しかし、日本ではすでに独自のビジネスモデルが確立されており、アーティストたちは既存のファンコミュニティやソーシャルメディアを活用しているため、あまり興味を持たれませんでした。しかし、「それならグローバルファンにつなげよう」と考え直しました。日本のアーティストは国内ではすでにファンとつながっていますが、グローバルなファンを集める方法や収益化の手法については、まだ手探りの状態です。だからこそ、私たちの強みであるグローバル展開を主軸に置いたサービスを展開していく予定です。


また、日本のエンタメ関係者と話していると、韓国の会社と組んでグローバルに進出したいと考えている方が多くいらっしゃいました。単に韓国市場を目指すのではなく、韓国と共にグローバルに進出したいという意欲が強いのです。K-POPが自然にグローバルに広がっているように、日本のエンタメも同様に世界に飛び出したいという意識が高まっています。

グローバルなプラットフォームやサービスを運営してきた豊富な経験を活かし、ファンを引き付け、データを収集し、このエンゲージメントを収益化するための具体的なノウハウを持っています。今後の大きな目標としては、日本国内での収益を上げるだけでなく、日本のアーティストのリーチを拡大し、新たな収益源を開発することで、最終的には日本のエンターテインメント業界とエコシステムの成長に貢献していきたいと考えています!

Michaelさん、日本でのビジネスと経験談をシェアしてくださり、ありがとうございました!

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